改札を出て空を見上げると、そこには無数の星が広がっていた。星座についてはあまり詳しくは知らないが、夜闇を埋め尽くすほどの光に出会うとひとりでいても大丈夫なような錯覚に襲われる。同時に大切なはずの誰かのことを思い出す。
ぼくは上着のポケットからイヤフォンを引っ張り出して両の耳に差し込んだ。そして買ったばかりのアルバムを流し始める。
いきたい場所も分からないままにぼくはここまで辿り着いてしまったな。
これから何処へ向かえばいいだろう。一体誰に会えるだろう。帰る場所はあるのだろうか。強い風が吹いて頬をくすぐる。ほのかに潮の薫りが、漂った。
雨が降っているのだと思った。
無意識のうちに口ずさんでいた歌をやめて仰ぎ見ると、しかしそこには変わらぬ星空が広がっているだけだった。風にさらされた頬が酷く冷たい。2周目に入ったアルバムからは再び雫のように音があふれ始めていた。
暗闇を切り裂いてぼくの行き先を照らし出す、そんな光はとうとう見つからなかったけど、影を抱えて生きていこうとぼくは思う。そうして大切なはずの誰かのことを思い出す。ひとりの足でも歩いて行ける。
地平線で燃え続ける一等星。
ポケットの中の手のひらで指差した。明日が来てまた夜に目覚めても、二度とぼくたちが道を探して途方に暮れることはないだろう。